http://d.hatena.ne.jp/sib1977/20080710/p1の『ハルさん』(藤野恵美)
- 作者: 藤野恵美
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/02/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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の感想の続き。
価値観って言う言葉を私はよく使う。
自らの価値観を信じながら、疑いながら人は生きていく。
価値観を守り続けることは難しいし、時に変更を余儀なくされる。
でも、譲れない価値というものもあるだろう。
その価値観を、好きな人・愛している人・尊敬している人に承認されたら嬉しいだろう。
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語り手であるハルさんと娘のふうちゃんの2人がメインの物語。ふうちゃんの母親である瑠璃子さんは既に亡く、ハルさんは自らの子育ての仕方を疑いながら子供を育てていく。社会人としての至らなさや、親としての至らなさを常に突きつけられながら。氾濫する情報に振り回されそうになり、いつも迷いながら。
でも、自分が正しいと思うことをしよう、とハルさんは思っている。ふうちゃんの謎の行動に対し疑いつつも、最終的にはふうちゃんを信じている。
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この物語では、5つのエピソードが最後に綺麗に収束する。
現実の世界では、このように綺麗な収束の形はないかもしれない。物語とは抽出されたものであるし。
自分の努力とか悩んだ末の決断とかが、気がつかないうちに良い結果を生むことがあると思う。そういうのを過小評価してはいけないと思う。
そういうふう感覚的に思っていて、そういうことを伝えたかったことがあるけど、私の力が足りなくて、それを伝えられなかったことがあった。
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『灰羽連盟』(ASIN:B000JSIBN6) を見たときも思ったのだけど、人は自分の努力(そして、それに伴う苦しみや悲しみ)とかが意味があると信じたいのだと思う。そういう強い衝動が生じやすい。それは、無意味なことを意味があると無理に思い込むことにもつながるわけで、気をつけなければいけないことでもある。
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未来に対する不安や恐怖を抱えて、人は生きていかなければならない。そして、不安や恐怖があるからこそ、人は努力をし、危険を回避したり、大事なものを得たり、より良い人生を歩むことができる。
努力が報われたと思うのは一瞬かもしれない。でも、そのために生きているのかもしれない、って思うことがあるし、そのような強烈な感動が一度でもあれば、その人の人生は幸せだと思えるし、その後の人生もそれを支えに生きていけるのではないかと思う。