女神のささやかな願い / Merciful Goddesses of Retaliation その2

昨年末くらいからちょこちょこと書きためていたものです。

タカナは、異様に大きな黒い鳥居の前で、掃除をしている30代半ばの女性と出会った。彼女は、タマキと呼ばれている。この神社の神職の1人である。簡素な黒い服装。平均身長に比べ10cmは高い。長い黒髪を銀色の髪留めでアップにしてまとめている。化粧はほとんどしていないように見える。ナチュラルメイクかもしれない。その緩慢な立ち振る舞いや優しげな口調から、のんびりしていてゆったりしている感じの人であると感じられる。タマキが「今は暇な時間帯なので案内しても良いですよ」というので、タカナは案内してもらうことになった。


タカナはタマキと一緒に、本殿へ向う。道は黒い石畳で敷き詰められていて、その上をゆっくりと二人は歩いた。タカナにとっては通常の歩速の3分の1程度だと思われる。タカナは自分がいつも早足で歩いていると言うことを改めて認識した。たまにゆっくり歩くのも悪くないかもしれないとタカナは思った。


タマキが言うには、普段は少なくない数の人が参拝に訪れているらしい。しかし、タカナが鳥居をくぐった後、敷地内でタマキ以外に誰も人を見かけることはなかった。周辺はとても静かだった。清浄な空気。しっとりとした、程よい湿度と程よい気温。タカナの呼吸は自然に深くなる。タカナは人がほとんどいない神社や寺の空気というか雰囲気が嫌いではない。タカナの心は落ち着き、安らいだ気持ちになった。