女神のささやかな願い / Merciful Goddesses of Retaliation その7

会話形式を用いて何かを表現するというのはなかなか面倒だな、ってあらためて思いました。現時点では超常的なことは起きていません。設定はファンタジィな感じです。

タカナとタマキは本殿にようやく着いた。本殿は木造がメインで、コンクリートや大理石も使われている。奥行き横幅高さが30メートル、40メートル10メートルくらい。賽銭箱や鐘はない。タマキは立ち止まり、本殿の扉の前で深呼吸をした。そして、神妙な顔つきで私を見た。

「当然ながら、復讐を諦めることを神は喜ばれません。また、安易に軽い気持ちで、復讐を行おうと思うものも好まれません。復讐とは人の儚い生をかけるに値するものだと考えているようです。とは言っても、復讐を諦めたものに罰を与えるようなことはしません。二度と加護は得られないことになりますが。払った代償もこのような場合には返却されません」

「さて」と言い、タマキは少しの間、口を閉ざした。タカナは何か大事な質問が来ることを予感する。

「タカナさんは何故、この神社を訪ねられたのですか?」と、タマキは問うた。


タカナはこの話の流れから、その質問を予期していた。だから、狼狽えることもなく応じた。
「まず、誤解しているかもしれないので、誤解を解いておきたいのですけど、私には具体的に復讐したい相手があるわけではありません」

「そうですか。なんとなく、そのような気はしていましたが。復讐を願う人たちには、ある種の雰囲気があります。あなたからはそれを感じませんでしたし。では、それこそ、何故こちらを訪ねていらしたのですか?」
「・・・私は私の信仰の対象と成り得る神を探しています」
タマキは目を見開いた。珍しいものでもみるように。
「神? 神ですか。それは、珍しい。でも、それをここに求めに来たのですか? 一般的なことですが、目的を承認するのが、この地の機能であり、目的を探すものにとっては、ここに有益なものはないと思われますが?」

沈黙。数分ほどの。

タカナが口を開いた。
「では、案内はここまでで終わりでしょうか」
タマキはじっと、タカナの目を見た。

「いえいえ、そんなことはありません。いずれ、あなたが復讐を望まれることもあるかもしれません。後続となるものために後に役に立つかもしれない標を示すことは悪くはないでしょう。神の機能を多くの方に知っていただくのも、神職の務めの一つと言えるでしょうし」
と言いながら、本殿の扉を開けタマキは中に入る。

「ついて来てください」とタマキは後ろを振り向いてタカナに中に入るように促した。中は明るいとは言えないが、それほど暗いとも言えない。