女神のささやかな願い / Merciful Goddesses of Retaliation その8

神様とか宗教ネタは嫌いではないくせに私は無神論者です。科学の法則と反するようなものは信じるのが難しいです。物理法則に反しないような教えを作ってくれればいいのに。

「有限リソースの教え」http://www.annie.ne.jp/~hachi/aketekure/finiteResource.htmlとかはいい感じかもしれない。まあ、全部首肯できるわけじゃないんだけど。

「あなたは、神に触れたくてここに来たのですね。どこでそのような情報を手に入れたのかは問いませんが、よくもここを探し当てたものです」
タマキは静かに言った。


「本神社の地下にある神が封じられた区画へご招待しましょう」とタマキはタカナに部屋の隅にある階段を下りるように促した。階段を下ると、さらに、エレベータが設置されている。彼女がスイッチを押すと、扉が開いた。タマキとタカナはその狭い箱に乗り込んだ。
タカナには、逡巡や躊躇の気持ちはこのときほとんどなかった。通常であれば、少々の恐れを感じると思われる。おそらく、同種の経験をしたことがあるのだろう。



下降するエレベータの中で、タマキはタカナに語りかける、というより独り言のように言葉を発した。


「誰にも必要とされない神など存在するに値しません。人々が神を真の意味で必要としなくなったときに、この神社にある神性は消滅するでしょう。それで良いのだと思います。価値がないもの、意味がないものを長い間無理して維持しようとするのは、組織や社会のシステムに歪みをもたらします。一時滅びても、それが必要であれば、人はきっとそれを作ることが出来ます。そして、例え、人に必要とされなければ滅びるのだとしても、神は決して人に媚びません。ただ、祀られれば、それを受ける。そういう存在です」

タマキは、流暢に言葉を続ける。

「祀られれば受ける、とは言うものの、神は強い願いや一途な想いを特に喜ばれます。信仰者達が冷静に節度を持って自らの望みを達成することを神は望まれます。復讐という属性からは少々想定しづらいかもしれませんね。神は、参拝者や信仰を持つ人達に対しては、情熱を持って粘り強く焦らず怠らず慌てず丁寧に確実に目標達成して欲しいと思っているようです。とは言うものの・・・」

タマキは自身の両の手のひらをじっと見つめて言った。

「人が、何かを憎み続けることはなかなか難しいのです。また、それをできたとしても、きちんと復讐につなげるのは難しい。短気な方は、相手を殺してしまったりもします。それは、新たな復讐を生むわけでわって、復讐神としては、悪いことばかりではないのですが、殺してしまうなどの短絡的な復讐を神はあまり望まれません。被害と同程度の復讐を望まれます。神は、混沌を望まれるのではなく、秩序を望まれます。傾いた天秤を元に戻したいというのが望みです。その面で、裁判や公正の神としての側面があると、研究者の方々は言われますね。その属性ゆえに、報恩の神や贖罪の神とは相性が良いとされています。これらの神の存在は、『辻褄があっているべきだ』という人の望みを反映したものなのではないかと思います。神は、人が生み出した象徴(シンボル)なのですから」

エレベータは止まり、二人とも降りた。