女神のささやかな願い / Merciful Goddesses of Retaliation その16

10〜20年程度たったら、身代わりが来るってことになっていたのです。でも、適性があるものはなかなか地上に現れなかった。適性があり本人が引き受ける意志をもっていたとしても、家族が引き留めたりする場合もあったと思います。当然かもしれませんね。こんなところに身内が閉じ込められることを望むものなんていないでしょう。ずっとずっとほっとかれていたのです。ずっとずっと放置されたのです。神官は定期的に来るけど、別に雑談とかする機会はありませんでしたね。


この空間に囚われると、時間がゆっくりになる感覚があって、のんびりしてした気分になりますね。私がここに入ったのは15歳くらいだったけど、50年くらいたって、知っている人はほとんど死んでしまいました。外見上は、まだ全然年をとっていないのに。そのころになると私は神様扱いです。いくら『神性を纏うもの』、であっても元々人間ですからね。複雑な気持ちになりました。知っている人も、その子供達も全部死んだ頃になって、孤独をより強く感じた気がします。私のことを恐れ敬い崇め奉る人はいても、親身に考えてくれる人はもうたぶん現れないのだろうな、って思いました。神様として崇め奉られることはあっても、一緒に雑談をして笑いあったりする人は現れないのだろうと思いました。ずっと、人が滅びるまで、永遠に私はここに幽閉されるのだろうなって思ったのです。