女神のささやかな願い / Merciful Goddesses of Retaliation その18

タマキは、地上へ向かいながらいろいろ思うのだった。


あの神性はあと100年もすればほぼ消滅するだろう。100年後に、彼女は解放されるだろう。知り合いなど誰もいない世界に放逐される。その身軽さと悲しさをスズナは知るだろう。その気持ちを、タマキはわかって欲しいとも思う。でも、それはタマキが死んだ後のことになる。今のタマキにはスズナがいるが、未来のスズナには横に誰かがいる保証はない。

タマキには、スズナに言っていないことがある。それは、タマキの前に神性を帯び災厄をまき散らしたのは彼の兄だった、ということ。


誰かの神性を引き継ぐ際に、他者を憎んだり恨んでいたりしてはならない。しかし、例え恨みや妬み嫉みがあったとしても、それ以上に自らを憎んでいる場合は神性を引き継ぐことができる。世界から集めた復讐欲に対抗するほど自らを強く憎む心があれば。自己嫌悪というよりも自己憎悪というくらいに。


兄を手にかけたときに、兄を憎みそうになる自分自身をより強く憎んでしまった。故に、その神性を引き受けることができた。


タマキはスズナと入れ替わる時を思い出す。あの直前のスズナの目は、自らへの呪いで強く満ちていた。350年前のスズナと同じように。