「国立大学の学費値上げ 1」(『にびねこらむ』 No. 14)

「日々の生活」(『にびねこらむ』 No. 13) の続き。

 国立大学の学費の値上げについて。わたしは大学職員なので、ポジショントークになってしまうことを前提の上で読んで欲しい。それと、きちんとまとめるのも面倒なので、SNSのつぶやきみたいなものの羅列になる。きちんとまとめようとすると、そもそも書くのが面倒になってお蔵入りしそうなので…(言い訳)。学費と直接関係はないが、データに基づいたまともな文章を読みたい人は、『科学立国の危機』(著:豊田長康) あたりを読むと良いと思う。軽い気持ちで書き始めたら、長くなってしまったので、2回に分けて書く。

 

〇学費は上げないで済むなら上げない方が良いとは思う。金銭的な理由で、受験を諦める人が減れば、より多くの優秀な人材が大学に来る可能性が増えるから。

〇とは言え。お金に関する問題はシビアで。消費税は3%→5%→8%→10%上がるし、物価も上がるし、運営費交付金は減るし、大学は資金不足で追い詰められている。テクノロジーの発展による効率化はあるけど、テクノロジーの発展に由来する競争の激化もある。

〇正規職員を有期・無期雇用職員等で置き換えて人件費を抑えるのは悪手だと思う。組織として、非正規で雇うのは、人や組織を育てていくという気概が感じられないし。長い目で見ると結局高コストだ。育てた人材を雇止めし、新たに雇用した人をまた育てなくてはいけない。継続的に仕事があるのに、正規職員を雇わないのは変だよ。

〇財務省は、運営交付金が下がっても競争的資金も合わせれば、大学などにくるお金は減っていないというかもしれない。科研費などの外部資金は、継続的に獲得できるわけではないし、それを正規雇用の人件費にするのはなじまない。教育や研究には物も必要なんだけど、組織の維持にも研究・教育の維持にもやっぱり人が必要で、人が生きていくために衣食住が必要なように、組織を維持し機能させるためには最低限の人件費がいる。そこを見ないふりするのは愚かだと思う。

〇国立大学の授業料が高いのが問題と言うより、労働者の賃金が低すぎるのが問題だと思う。でも、一般の労働者の賃金を上げるというのは、行政や産業界が時間をかけて行うことであって、大学がすぐに何かできることはない。優秀な人材を社会に輩出することは、長い目で見れば労働者の賃金を上げることにつながるかもしれないけど、即効性はない。

(次回更新は2024年10月21日)→「国立大学の学費値上げ 2」(『にびねこらむ』 No. 15)

 

科学立国の危機 | 東洋経済STORE

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