杉浦日向子

http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0050.html

その誰もが訝った漫画中断の理由は、「私が江戸のものをちゃんと読むには、一冊の文献だって一カ月もかかることがあるんです。もっとかかるものもある。これからはそういうことをしたいんです」というものだった。


私の集中しているときの集中度なんてたいしたことはない、って思う。学問や研究は、現在の私にとってはご飯を食べるためにあるもの。もちろん、おろそかにはできない。ただ、稼ぐための学問を超えたところにあるものがある。強い集中力というものがこの世界にはある。学問に強く打ち込む姿や取り込まれている姿の片鱗を覗くと、とても怖いと感じることがある。生活から離れたところにある、妄執とともにある生を感じる。一種の狂気であるし、それがとても人間らしいと思うし、とっても愛しいと思う。価値を紡ぐことができる人への憧憬こそが、私が研究から離れられない一つの理由であると思う。