ポスドク研究員の機能(ぶれいんすとーみんぐばーじょん)

ポスドクというか、任期付き研究員が4年目な藤澤さん。でも、ポスドクってなんのかな?って言うのは実はあんまりよくわかっていない。きっと、家族はもっと分かっていないだろう。研究室の学生もあんまりよく分かっていないだろう。

まあ、自分なりにポスドクって何なのかな?って考えてみる。いろいろ重複もあるけど、ご容赦を。

  • 研究をする。
  • 教育の義務はない。
  • 次の職のために、論文を出すことが必要。論文を出すことが、研究者の能力を示すためには必要だから。能力があれば、次に雇ってもらえる可能性が高くなるはず。
  • 学生と一緒に研究する場合は、学生の指導をする事が望まれることがある。
  • 博士をとった研究室と異なる場所で働くことにより、ポスドク自身は新しいノウハウを得ることが出来る。学生の立場からでは見えなかった研究活動に関わる多くの事を知ることができ、自らがゼロから研究室を作るときに参考になる。
  • ポスドクを受け入れるサイドでは、新しく来たポスドクが今まで働いていた場所でのノウハウを知ることが出来る。人材を媒介にして技術や知識などをより緊密に交換することが出来る。交換するだけではなく、それが新しい研究などにつながる。1+1=2ではなく、1+1>2となるようなことが望ましい。
  • 終身雇用の教員のみから構成される研究室だと、蛸壺化や視野狭窄が進みやすい。自分達ができることしかやらない、みたいな。得意なことしかやらない、みたいな。それは、短い期間でみれば悪くないことかもしれないけど、長い目で見ればあまりよくないことも起こる。
  • 一般的に任期が短いために腰を据えた研究をする事が難しい。
  • 普通の大学教員とは異なる給与体系になっている(ことがある)。例えば、ボーナスとかはない。
  • 社会保障関係の費用は、自己で負担する必要がある(←実はあんまり知らない)。
  • 所属する研究機関や組織にもよるが、比較的自由である。ポスドクがやめたら、研究が滞って、その組織が致命的に破綻する、ということはない。例えば、研究室の教授・准教授が死んでしまったら、その研究室はなくなるが、ポスドクがいきなりいなくなっても、研究室がなくなったりはしない。研究速度の差はあれ、研究そのものがなくなったりすることはない。あるいみ、一番切り捨てられやすい職。派遣労働者に近いかもしれない。
  • あくまでも一時的な職であるという意味合いが強い。
  • 研究機関や研究組織における発言権はあまりないと思う。権利も責任も義務もない。最低限かつ最重要な義務が研究をして論文を書くこと。
  • ポスドクの力を最大限に引き出すためには、ポスドク自身がやりたいことやらせる必要があるし、そのためにはある程度の研究費が必要である。
  • ポスドクがやりたい研究が、ポスドクのしている仕事とは限らない。だから、内職をしていることもあるかもしれない。でも、それを規制することはたぶん無理だろう。期間内にある程度の研究成果を求めることはできるとは思うけど。
  • 社会のニーズもあるので、ポスドクがやりたいことをやらせておく、というのが最適の解であるわけではない。ある程度の義務と、ある程度の自由を与える、というのが妥当な所である。
  • ポスドク自身も「やらされている仕事」が面白いと思っていることはすくなくない。一番面白いわけではなくても、4番か5番くらい目におもしろいことであれば良いと思われる。
  • ポスドクが持っているのは狭い分野の専門知識と一般的な研究技能である。そのポスドクによって、得手不得手や知識や技能の幅の広さは千差万別ではあるが。だから、その狭い専門分野から離れても研究を行うことができる。もちろん、元の分野から離れるほど成果を産み出すのに時間はかかるかもしれない。元の分野と離れるから、新しい成果を生み出すことが出来るかもしれない。
  • 一般的な研究技能というのは、どんな社会でも必要とされる物であると思う。
  • 研究技能とは、問題解決能力とか問題発見能力とか重要である。
  • 研究技能の中には、研究成果を誰かに伝えることができる、といのもある。
  • 現在のシステムでは、ポスドクなんて長い間続けるようなものじゃない、とは思います。でも、年齢差別などがなくなればPIにならず、ずっとポスドクみたいな立場で一研究者として生きる、というのも有りではないかと思います。私としては研究する立場みたいなのと研究するための資金があり、それに相応する研究成果が出せれば十分だと思うので。


これらの考えを敢えて書いたのは、単に「ポスドク生活保護のようなシステムはやめるべき。本人にとっても不幸。」という、ポスドクの存在意義を真っ向から否定する意見に苛々したからです。人材の流動化がもう少し進めば、ポスドクという形態も必要なくなるかもしれません。でも現時点では、固定化しやすい日本の大学や研究機関での人事システムによる弊害を緩和させる機能を持ちます。また、今後は人材がより流動化する社会へ行くべきだと思いますが、そのための一つの方法であるとも思います。