女神のささやかな願い / Merciful Goddesses of Retaliation その1

大風呂敷な感じやね。ただの場面設定です。

神の時代は既に終わり、今は人の時代。多くの神は滅ぼされるか封じられるか飼いならされ、世界に大きな災厄を撒くことはもうない。高度に発達した法・規範・慣習・道徳・倫理などのソフトウェア上の枠組みと、それを支えるハードウェア上の枠組みは、多くの神の機能を減衰あるいは無化することに成功した。神々にとっては黄昏の時代。でも、神の名残は完全に消えたわけではない。それは、人の生物としての原初の衝動−例えば「死にたくない」とか−が消えないのと同様な理由による。


巨大な大陸から海を隔てて、東方に小さな列島がある。弓形を形成する列島からなる国。気候的には中緯度の温帯に属する。その国の首都圏は世界の人口の2%が集中する巨大都市である。その国の首都にある信じられないくらい広い緑地がある。そこに、ある神を祀る社がある。一柱の神がこの神社には封じられている。この神は復讐を司る、とされている。以前は多くの災厄を撒き散らしたこの神も、現在は小さな影響力しか持たない。


ある晴れた秋の日の午後、一人の娘がその神社を訪れた。娘はタカナと呼ばれている。娘の年齢18歳前後。身長156cm程度。桜色、桃色、朱色、紅色と白色で円や三角などの幾何学的模様が複雑に描かれた奇妙な服装をしている。足下は小さな黒いサンダル。足首には紅色の帯が巻いてある。