『物理工学実験 1 物理実験者のための13章』(兵藤申一)

p.38から引用。

たいていの研究機関では,設備の整った工作室があり,専門の工作員がいる.そういう環境で研究者に要求される能力は,いかにして自分の意図を正しく工作員に伝え,また工作員の積極的な協力を引きだすかという点にある.これは全く人間的な問題であって,一片の高圧的な命令でも出せばかたづくと思ってはならない.そうかといって,おためごかしのオベンチャラを並べても冷笑されるくらいがオチである.たとえ若くて経験の少ない工作員であっても、昔の職人気質(かたぎ)のようなものが,たいていどこかに残っているから,不思議である.つまり技能に対する自負と,それに伴う一徹さ頑固さである.工作員の協力を得ようとすれば,彼らの経験や発想を、謙虚に尊重するという精神が必要である。しかし,これは彼らの意見に盲従しろという意味では、決してない.彼らは経験の範囲内でしか語らないということが,強みであい欠点でもあるということを承知しておくべきである.意見が合わないといきは,あまり専門的な言葉を使わないように注意しつつ,徹底的に議論をする.そういう真剣で対等な態度こそ,工作員に仕事の上の連帯意識を喚起し,ハッスルしてもらうことにつながっていく.特に必要なことは,工作物が実験の中でどのように位置づけられ,研究全体がどのような目的と意義をもっているかを、よく理解してもらうことである.どうせ説明しても無駄だというような態度だけは,絶対に避けて欲しい.


最近買った本なんだけど、いろいろ面白い。

この本は1976年に出たらしい。古い本の方がいろいろ丁寧だなって思う事が多い私。