- 作者: 向井万起男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/07/17
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (28件) を見る
薦められたので、いつもより丁寧に読書。
p.47
宇宙飛行士の給料について。なんか安いような気がするんですが、こんなもんですか。ちょっと昔(20年以上前ですね)とはいえ。
p.75
「とっても重要なことに心配があるのよ。私は宇宙飛行士になることができたら、宇宙への夢を追い続けたいと思っているし、もし宇宙飛行士になることができなくても、心臓外科医として一生働いていたいと思ってるんだ。自分の夢を追い続けたい、一生働いていたいという女性の結婚相手は、そういうことに理解のある男性でないとマズイんじゃないかと思うのよね。でも、向井先生は、そういう男性ではないような気がするんだ。どうしてかと言うと、向井先生には男女平等という気持ちがないから。向井先生には、何となく、男性と女性は別だっていう差別意識みたいなものがあるような気がするんだ。そういう男の人って、奥さんが夢を追い続けることや、一生働くことに理解を持ち続けることが難しいんじゃないかなあ」
私は、働く女の人ではないと一緒にいるのがつらい気がする。・・・なんとなくね。働いていない女の人と普段接する機会がない、というのもあるかもしれないけど。
p.82
("凛々しく生きる"というのが私の女房のモットーというか口癖である。)
受けた。
p.98
さて、ひとつ問題が残っていた。式をどこで挙げるか、披露宴をどういう規模にするか、新婚旅行をどこにするか、といった結婚につきもののことだ。私は、すべて内藤千秋の希望通りにしてあげようと男気を発揮することにした。何といっても結婚というのは女性にとて人生最大のイベントだからと考えたのだ。私に希望を聞かれた内藤千秋は言った。
「ホントに私の希望通りでいいの?」
「ああ、ホントにいいよ。何でも君の希望を言っていいよ。必ず、君の希望通りにしてあげるから」
「それじゃ、私の希望を言うわ」
そして、私たちは、式なし、披露宴なし、指輪の交換なし、記念写真の撮影なし、身内だけのお祝いの集いなし、新婚旅行なし、な〜ににもなしという結婚をすることになった。一九八六年一二月二六日の朝、忙しい私たち二人の代わりに私の両親が婚姻届を出した。それだけ。
うちの妹も変わった性格だけど、ここまではいかないだろうな。こういう意志は好きです。
p.100
私の女房は毎晩、台所で鼻歌まじりでじつに楽しそうに夕食の仕度をする。ときどきは、自分一人だけワインを飲みながら、ワアとかキャアとか、わけのわからないことを叫びながら料理を作る。
なんかかわいらしい。
自転車の話がでてきてその後のp.108。
私がベッドで寝て、女房は床で寝る。
これもなんかすごい。
p.110
私の女房はほとんど化粧をしない。
「化粧しないと失礼」「化粧をしないなんて、礼儀がなっていない」とか、そういうふうにいう人たちは大嫌い*1。思っていてもいいけどね。
p.111
私の女房は信じられないくらい洋服を買わない
なんていうか、こういう感じのある意味最適化されているようなところに意志を感じるし、私はこういうのが好きだったりする。もちろん、最適化の形態はいろいろあるわけで、尊重・尊敬できるものはたくさんあることを付記しておこう。
p.118
女房は私の言葉を聞いて、寂しそうな表情を見せた、ほんの一瞬だったが、私にはわかった。"この人は、私が結婚したこの人は、やっぱり何もわかっていない"という寂しそうな表情だった。そんな表情を女房の顔に見るのははじめてだった。女性だって男性と同じように夢を追い続けることができるんだと思っている女にむかって、言ってはいけないこと言ってしまったことに気がついたが、もう何をいってもだめなような気がした。黙っているよりテがなかった。私が女房の人生で占めることができる範囲というものの限界を垣間見たきがした。
ここらへんの記述がたいへん面白いと思ったりする。
p.130
まず、私ほど、妻から根本的には何も期待されていないという感じでラクに生きている夫というものも珍しいと思う。
これも面白い。
p.140からはじめる「凛々しく生きる」あたりは良いですね。ちょっとジーンときました。
p.198
私は、"人間とは弱いものだ、脆いものだ"ということを正直に認められる社会こそが成熟した社会だと思う。すべての人間が弱いわけではない、すべての人間が脆いわけではない、と主張する人にたいしては言い方を変えよう。"助けを必要とするなら、誰であろうが、どんな職業の人であろうが、それを受けるのは決して恥ずかしいことではない"と考えられる社会こそが成熟した社会だと思う。そして、そうした成熟した社会は、"助けを必要としている人がだれであろうが助けようではないか、我々ができることをやろうではないか"と考えるのだ。私はここに感心した。宇宙飛行士というのは、こういう助けを受けることを恥じなければならない職業とは思えない。家族思いであってはいけない職業とは思えない。宇宙飛行士に限らず、そんな職業があるとは私には思えない。
ここらへんの考えも面白いと思う。
とりあえず、上巻で気になったことはこれくらいかな。読みやすい本でした。まぁ、下巻はそのうち注文しますかね。
なんとなく、情けない男を演出しているようにも読めますが、このレベルの文章は誰でも書けるものではありません(私の嗜好・志向とは異なりますが)。
まぁ、なんていうか、惚気本だと思います。えっと、褒めてるんですよ。
*1:ちょっと言いすぎか。その発言をした分だけ、私はその人のことをつまらない人だと思う、って程度です