『数学をつくった人びと〈2〉』(E.T. ベル)

数学をつくった人びと〈2〉 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

数学をつくった人びと〈2〉 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

「20 天才と狂気 ガロア」のところをちょっと読む。

遺書となる手紙を書く前のことについて。

p.327-p.328

この手紙を書くまえ、彼は終夜学術上の遺書を書きとばすことに没頭して、矢のようにすぎさる数時間をすごしたのである。彼は自分の死を予感して、わきたつ頭脳の中から少しでも業績を残そうと、時間と競争しつつ書きに書いたのである。ときどき、彼は筆をとめて余白に「時間がない。時間がない」と走り書きしては、またおそろしくぞんざいな筆跡で、つぎの概要へと進んでいった。夜明けまえのこの絶望的な時間に書かれたことがらは、数百年ものあいだ、いく世代もの数学者を多忙にせずにはおかないだろう。彼はついに、数世紀間数学者を悩まし続けてきた謎の真の解法をみつけた。いかなる条件のもので方程式は解きうるか、という謎である。


こういう文章が書けるなら小説家とかノンフィクションライターとか、文章を書くことを仕事にできるだろう、と思う。

凝縮された"生"が書かれていると、私は、心を打たれるのだと思う。