何かがあるってそういう予感

28歳未満はお断りです。

疏乃は言う。「わからない」って。それは「わかることができない」という能力の限界のこと?「わかりたくない」って拒否・拒絶のこと?

私は尋ねる。
「わからない、と言うことは私を疑うことに通じるんだよ。それはわかる?」


彼女は沈黙で応える。

はぁ、と溜息を私は吐いた。そして、
「でも私があなたを騙す可能性もあるわけだしね。簡単に決めろ、って言うのも無理か。」

沈黙。彼女は静かに私を見つめる。

私は思いっきり笑顔を作って、
「そんな簡単に信じてしまうようだったら、逆にこちらがあなたを疑ってしまうね」

沈黙。彼女は静かに目を瞑りそしてゆっくりと開く。少し耳をそばだてたようだ。私は彼女の心にアクセスするために、心の襞になんとか取っ掛かりを作ろうと言葉を紡ぐ。
「では、応答の中から見つけられないかな、あなたが求めているものを」

「応答?」
わずかに・・・、きょとんとした表情。予想外?これが手掛かりかも。相手に言葉を紡がせることはできるかな? 私は現時点で相手の言葉をほとんど引き出せない。

「少なくとも、私はあなたに時間を割いている。何故、私があなたを騙すために、そういうことに時間を割くのだろう?」


沈黙。彼女はいくつか可能性を考慮しているようだ。
沈黙。

私も沈黙を続ける。

沈黙に耐え切れなかったのは私の方。
「時間は全ての人にとって貴重だよ。時間を何に使うか決めることができることが自由ってことだよね。私にとって貴重な時間を何故私はあなたに投資するんだろう。それをどう説明する?」

当たり前のことを言うのは相手を馬鹿にしていることになりうるし、分かりにく過ぎることを言っても相手に通じない。

彼女の僅かな反応を見つつ、ぎりぎりの言葉を使っているつもり。自分の考えを押し付けるのでは駄目。

あくまでも、相手を引き出すために、というガイドラインの元に。私はいつも暴走しがち。

疏乃は少し伏し目がちになり、そして私の顔を見つめる。私は少しどきっとする。

「『私があなたの何をわからないか?』は、なんとなく分かる気がします。もう少しで掴める気もします。でも、何故あなたが・・・」

彼女は黙ってしまった。応答を待っているわけではない。たぶん、この表情から、疏乃は計算・演算しているのだと予想。

あせらないで。落ち着いて、と私は自分を必死に落ち着けようとする。次は何を話すべき?

どう説明する?って私は言った。私だって、明確な答えを持っているわけじゃない。何故、彼女に付き合うのかな? 時間を割くのかな?


それは、そこに価値があるという予感。
それは、誰もが捉えることができるわけではない価値。私を研磨する価値。

たぶん、彼女は「私が彼女に対してなぜ干渉しようとするか」ということが掴めないのだろう。

私だって良くわからない。意味があるという予感に過ぎない。でもね、私がわかって欲しいのは、「私はあなたのことを気にしている」っていう事実なんだ。

突然、私の中を何かが通り過ぎる感覚。理由はわからないけど、私はあなたのことを気にしている、ってことが彼女も後で分かるだろうという予感。


今すぐは認識できなくても、この会話があったこと、それを彼女が思い返せば、つまり客観的に未来から過去を見れば、わかるんじゃないかと。とりあえず、「干渉したいという想い」の存在の説明はできなくても、「干渉したいという想い」の存在から、私の行動の多くを説明可能であることがわかれば、「干渉したいという想い」の存在は相手に定着するはず。

か細い綱の上をわたっていくような、弱々しい論理というか予測。

私は、相手がいずれ理解してくれることを前提として、さらにそれを強化させるために言葉を紡ぐことにする。

「私にとって一番重要な要素って何だと思う?あなたとはかけ離れているだろうか?」

相手に対しての問いであると同時にそれは自問でもある。

人は、というより私は、他者を通して、自分の中にある、自分一人では発動しない気質を探っているのかも。

予感の中の一つとして、彼女と言葉を混じらせることによって、自分の中に何かを見つける、自分の中に新しいものを作ることができる、というものがあったのかも。

他の人と話すときはここまでいろいろ考えないと思う。つまり、彼女は私の一部を発動させる存在?ってちょっと暴走しすぎか。心にブレーキ。


なんだこりゃ。語り手はたぶん女の人。


二年以上前に作ったような気がする。部分的には面白いことを書いているような気もするが話の流れがさっぱり分からない。