女神のささやかな願い / Merciful Goddesses of Retaliation その12

力を持った神は、神の力を封じる封印区画の中に隔離されている。長い時間を結界の中で過ごした神は、閉じ込められたばかりの頃にあった迸るような力を失っている。


神と言うよりも、正確には「神性を担うもの」という表現が良いかもしれない。この「神性」はある条件下で他者に譲り渡すことができる。また、「神性を担うもの」になるためにはいくつかの条件がある。「神性を担うもの」は不老であり(不死ではない)、封印区画から出ることができないなどの性質を持つ。


封印区画は、世界にある行き場を失った意思・意志・想念・情念・欲望を吸収し長い、時間をかけて無化・浄化するシステムの一部である。結界の中にいる神性を担う者の属性により、集められる想念は異なる。神性を担うものがいなければ、封印システムは作動しない。


「ねえ、スズナ」とタマキは続けた。
スズナの身代わりにちょうど良いと思います。でも、スズナは乗り気ではなかったみたいですね。そんなことでは、スズナはここからずっと出ることができないですよ。スズナが纏う神性を剥離し、他者に纏ってもらって、初めてスズナはここに仕掛けられている結界を抜け出ることができるのです。スズナは既に20年近くもここに幽閉同然になっているのですよ。もう既に十分役目は果たしたではないですか。以前、誰しも神性を纏う適性があるとは限らないって言ったでしょう?さっきの子なら、適性がありました」


「適性・・・。適性ねぇ」ってスズナは呟いた。
タマキは言う。
「既に何回か言いましたが、『神の依り代』、『神性を担うもの』としての適性を判断する上でいくつかの基準があります。まず『十分に若い』こと。そして『復讐の神性』を担うためには『他者を憎むような意志を持たない』ことが必要です。他者を強く憎むものは、復讐欲に振り回されて神性を担うものが破滅してしまいます。この神社に訪れる信仰者たちは基本的に復讐の心で満たされている故に、その役を担うことはできないから、タカナさんのような人が訪れるのはとても稀です」

安易に神様とかを出してしまったけど、私が書きたいことの多くは、「復讐支援センター」とかそういう設定を作ればほとんどいえたわけだね。神様という属性を出すと、その周りの設定をいろいろ詰めないといけないので面倒だ。神様を出した必然性も必要になるし。まぁ、一途な想い、というのを出すためには有効だったかもしれないけど。