『人間の本性を考える(下) 心は空白の「石版」か』(スティーブン・ピンカー)

人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (下) (NHKブックス)

人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (下) (NHKブックス)

ソーンヒルとパーマーは進化論の立場から、動物界全体でメスがセックスの強要に抵抗する理由を説明し、レイプ被害者が感じる苦しみは女性の本性に深く根ざしていると論じている。レイプは、性淘汰という普遍的なメカニズムの中核である、メスの選択を妨害する。メスはオスを選び、セックスをする状況を選ぶことで、すぐれた遺伝子をもったオスや子育ての責任を共有する能力と意志をもったオス、あるいはその両方を兼ね備えたオスを自分の子供の父親にするチャンスを最大にすることができる。ジョン・トゥービーとレダ・コスミデスが述べているように、この究極の(進化的)計算は、女性が「自分自身のセクシャリティや、関係をもつ期間や、どの男を子供の父親にするかの選択を支配する」ように進化した理由の説明づけになる。女性がレイプに抵抗し、抵抗がうまくいかなかったときに苦しむのは、「セックスの選択と性的関係に対する支配力を奪い取られた」ためなのである。

ソーンヒルとパーマ-の理論は、エクイティ・フェミニストの分析を多くの点で補強する。彼らの理論は、女性の立場から見ると、レイプと合意にもとづくセックスはまったく違うと予測する。女性がレイプを嫌悪するのは神経症的な抑圧の徴候でもなければ、異文化のなかで容易に逆転するような社会的構築でもないと確言する。レイプが引き起こす苦痛は、他の身体的外傷や暴行による苦痛よりもより深いと予測する。そして、レイプを防止するために、他のタイプの暴行を防止するために払われている努力を上回る努力を払い、ほかのタイプの暴行に対する処罰よりも厳しい処罰を加害者に与えることの正当性を示す。


強姦事件とかがあると、これを思い出す。