某論文の原案 -Introductionに関して-

なんか、やる気が起きないので、ちょっと後ろ向きな話。最近出版された論文に関して。


当初はこんな感じのイントロにしよう、と思っていた。

*低次元磁性体(←g値や、線幅について言及するので必要)
  古典スピン(TMMCなど)、量子スピン(Haldane系など)
*スピンギャップと、磁場誘起秩序(←直接遷移の説明とスルホンの物性に絡めて必要)
*強磁場ESRの利点と直接遷移観測(禁制遷移であること、それが起きる実際のサンプル例)
Sakaiらのルール
*例 KCuCl3, TlCuCl3, NH4CuCl3, CuGeO3, SrCu2(BO3)2, Cu3(CO3)2(OH)2, NENP, NINO
*スルホンの磁性


ディスカッションの後に、これでは駄目、ということになったので次のような感じに。

Bose Einstein condensation(BEC) BECの例:
・電子対のBEC(超伝導)
・液体ヘリウム原子のBEC(超流動)
・気体原子のBEC(原子レーザー)
・光子のBEC(レーザー)
・quasi-particleであるmagnonのBEC。TlCuCl3で発見され、注目を集めている。
*TlCuCl3の性質
・S=1/2のHeisenberg型反強磁性体。spin dimerが3次元的に相互作用したスピン系。
基底状態はspin singlet、励起状態(spin triplet)との間に有限のエネルギーギャップ(spin gap)。
・spin gap系に磁場を印加するとgapがつぶれ、long range orderが実現。
この磁場誘起相転移は、magnonのBECと捉えることが可能。
・磁場Bは化学ポテンシャルμとはμ=gμB(B-Bg)と対応(Bgは臨界磁場)。
⇒化学ポテンシャルを連続的に制御可能→Bose凝縮の性質を探るのに適す
・TlCuCl3を含め、このようなspin gap系の基底状態励起状態には通常寄与の小さなDzyaloshinsky-Moriya相互作用が無視できない影響を与えている(←ESR測定)

*DM相互作用
 直接遷移の原因(Sakaiの論文等)SrCu2(BO3)2
 Oshikawa Affleck理論(breather 励起など Cu benzoate)
 寄生強磁性の原因(Fe2O3)。らせん磁気構造の原因。スピングラスなど不規則系の磁気異方性の起源
 BaCu2(Si1-xGex)2O7
 磁気秩序があれば、DMは中性子散乱によって検出可能 SrCu2(BO3)2
*Cu2Cl4H8C4SO2の性質
・S=1/2のHeisenberg型反強磁性鎖。二重鎖構造
・二重鎖同士は有機分子H8C4SO2により分離。一次元性は良い(はず)
・二重鎖内の交換相互作用はleg方向が支配的。zigzagなrung方向は弱い
・leg方向のスピン間距離は交代。S=1/2のボンド交代鎖(J,J’、交代比α=J’/J=0.98)
 ・α=1(uniformな系)ではspin gapなし。基底状態はspin liquid。
・spin gap。磁場誘起相転移(magnon BEC)
・なんでこの物質が面白いのか?
magnonのBECに関しては、S=1/2のspin dimerが弱く結合した系が実験的によく調べられてきた。本系は弱く相互作用するdimerと言うより、交代比α(=J’/J)が1に近い交代鎖であり、異なる結果が期待される。ダイナミクス基底状態を調べるために強磁場ESR測定を行う。

*強磁場ESRの利点と直接遷移観測(禁制遷移であること、それが起きる実際のサンプル例)
 KCuCl3, TlCuCl3, NH4CuCl3, CuGeO3, SrCu2(BO3)2, Cu3(CO3)2(OH)2, NENP, NINO

紙面の関係上、結果として、ここの記述の多くは削られてしまうことになる。

あと、ここに書いてあることは私の勘違いで初歩的な間違いがあったりします。鵜呑みにしないように。