『博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか?』(榎木英介)の感想2

博士漂流時代  「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

書評と言うより感想。感想と言うより、インプレッションの羅列。
http://d.hatena.ne.jp/sib1977/20101212/p1 の続き。

「第1章 博士崩壊」を読んで思ったこと


p.34に、「博士が100人いるむら」がでてきた。
p.43に民間企業からみた、博士号取得者・ポスドクの評価について書かれている。

「でもしか」タイプが多い(大学や研究機関でやっていけないから)
説明能力の欠如(専門外の人に対して)
柔軟性や適応性に難がある
忍耐力が欠如している
視野が狭い
専門分野に固執

  • まあ、そういう側面もあるかもしれないけど、なんか酷い言われようだな。これらは、全部プラス面に変換した書き方ができると思うよ。
  • そもそも博士である時点で、って「でもしか」じゃないだろって思う。説明能力の欠如と言うけど、説明するまともな内容すら持っていない人間よりましだろう。時間をかければ説明能力はだんだん向上するだろうし、その人が説明できなくても別の翻訳係がいればいい。柔軟過ぎたり、適応しすぎたりしても弊害があるだろう。博士をとるのに、忍耐が必要ではないと言うのか? または、つまんないことに我慢してばかりで本質的な解決策から逃避するより、忍耐が少なくとも有効な道を探す方が良いのでは? 時に視野を狭くして物事を深く深く考えていくことも必要でしょ。専門分野に固執した経験があるから、別の専門分野についてきちんと考える事ができるかもしれないよね。専門を学んだ事がない人は、一から教えなくちゃいけない。それには凄いコストがかかる。専門についてきちんと学ぶのはどれくらい大変かを分かっていないのだし。
  • ・・・とまあ、深く考えないで書いちゃったけど、いろいろな側面があるよねって事が言いたかった分けですよ。

p.58に、ポスドク高齢化問題が載っている。うーん。

p.68あたりから、生物学系のポスドク問題。バイオ産業はあんまり増えないのに、学生ばっかり量産するから・・・。これもきっと人災なんだろうな。


「はじめに」を読んで、もっと前向きな話が出てくるのかと思ったら、現状の厳しさを目の当たりにする事になったのでした。

続く。
http://d.hatena.ne.jp/sib1977/20101216/p2

『博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか?』(榎木英介)の感想1

博士漂流時代  「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

書評と言うより感想。感想と言うより、インプレッションの羅列。長い引用があります。

「はじめに」を読んで思ったこと。

p.5

ポスドク生活保護のような制度はやめるべきだ。」

p.16

医師になれば、医学部卒業後しばらくすると年収が1000万円を超える。もちろん一部の大企業やベンチャー企業経営者などの年収に比べれば低いが、ポスドクからは圧倒的に高い。ポスドクの給料は300万円程度だからだ。

  • そんなに違うのか。ちょっとびっくりした。「無理して博士まで出したのに、給料はそんなもんか」、というのは親だったら思うかかもね。
  • 私の両親は、「好きなことをしなさい」と言ってくれた(気がする)けど、内心どう思っていたかはわからない。騙したつもりはないけど、現状がどうなっているかをきちんと説明はしていなかったとは思う。なんというか、手探りでこの業界がこうなっているのか、って言うのを知ってきたから、入る前にはどうなっていたかわからなくし。
  • 年収は、300万円程度だったかなあ。私のポスドク時代の給料は、これに1割2割ましだったかも。ただし、社会保険関係は自腹です。これで、1.5割くらい給料が削られる。(>_<)
  • 私の知り合いのポスドクだったの人は、年600万円くらいもらっていた人もいました。社会保険とかがどうなっているかは聞いていないです。ポスドクもピンキリのようです。
  • 自由に研究テーマを決めることができるポスドクもいるし、研究するテーマが決められているポスドクもいますね。


p.19

つまり、今起きているのは、実は博士余りではなく、ニーズに見合った人材が見つからないというミスマッチなのだ。

  • 私もそう思う。いろいろ就職活動のシステムが発達しているのに、マッチングがうまく行かないんだなあって思った。なぜ、マッチングがうまくいかないのか?どうすればマッチングがうまくいくのか?などについてはこの本の後でいろいろ出てくる。


p.19

日本人がだめなら、外国から呼んでくればいいのではないか。そんな声も聞かれる。現に政府は留学生30万人計画を実行に移そうとしている。これに関連する予算は「事業仕分け」の対象にもならなかった。

  • あー、やっぱりそうなのか。事業仕分けの対象になっていないんだ。30万人計画は、とりあえず、呼ぶだけ呼んどいて、ケアがない政策というイメージ。優秀な人を呼ぶと言うより、金持ちしか来ることができない感じがしてた。大学の学生数を減らさないためという感じがする。まあ、いろいろ良いことも言っていて理念は否定したくないんだけど。方法面でいろいろつめられていない気がした。
  • ちょっと脱線します。留学生だけど、寮みたいなのを作って、日本人と一緒に生活してもらうシステムとか作ればいいのに、とか思ったりしたよ。
  • もっと脱線する。大学や教育関係とは離れる話だけど、今の貧困政策で圧倒的に足りないのは住む場所の保障だと思う。


p.19

しかし、自分の国の人材すら大切にしない国に、外国からわざわざ優秀な人材がやってくるだろうか。今全世界で優秀な科学・技術人材の獲得競争が行われている。

  • 外国人労働者の問題とかもそう思う。なんか安くこき使おうという魂胆が見え見えな気がして。
  • 「隗より始めよ」という故事成語を思い出した。


p.20からはじまる「博士を使い倒そう」というのは賛成。この本では、第4章、第5章に詳しく書いてある。



p.21

視野が狭い? 年齢が高い? 処遇に困る? 誰にだって欠点はある。世の中に完全無欠の人間などいるだろうか。多少の欠点には目をつむってでも博士が持っている知恵を使い倒し、新しい発見や発明をしてもらったがほうが、得られる物は大きいはずだ。

  • とっても前向き。私も同意見。

博士を使い倒すと利益が得られるのは、研究開発職に限らない。教育現場に博士がいれば、子供たちの目は輝くだろう。また、食品安全、原子力BSE(狂牛病)、生殖医療、環境といった、科学・技術と社会が深くかかわる課題に取り組む博士が増えたら、課題の解決に近付くことができるのではないだろうか。政府に博士がいれば、科学・技術をもっと活用する政策が立てられるのではないだろうか。


p.22

人材を有効活用できていないというのは、何も博士だけではない。今の日本では、年功序列、雇用条件の硬直化、縦割りといったことで、あらゆる分野で、人材をうまく活用できていないのが現状だ。博士という、一般には使いにくいと言われる人材の才能をフル活用することができ、日本が元気を取り戻したら、それは日本の雇用、働き方という部分に大きなプラスの影響を与えるに違いない。

  • いい感じの筆致。とっても前向き。博士余りの問題は、比較的解決しやすい問題な気がしてくる。問題は、制度的な障壁と、価値観の変化への心理的抵抗感なのかも。

p.23

私は、博士の活用こそ、不況にあえぐ日本の大逆転の鍵であり、人類の未来を決める鍵だと信じている。

  • ちょっと大風呂敷ですね。可能性はあるけど、難しい気もする。でも、こういうのを信じる人が増えればあるいは?とも思う。

続く。
http://d.hatena.ne.jp/sib1977/20101214/p1

「なぜ、この10年間で、研究留学する人が減ったのか」(『What's new!』2010年10月20日)

http://www.kenkyuu.net/whatsnew/2010/10/column2010-10-20.html

一方、非MDの人にとっては、ポスドク1万人計画のおかげで、有期ののポジションが増えた反面、常勤のポジションの競争が激烈になり、海外に渡って長期的に業績をあげてよいポジションを狙うより、日本に残ってコネを大切にした方がよいと判断する人が増えた。

2001年のテロ事件の影響で、アメリカの治安が低下したが、それを嫌って、一時的にアメリカを敬遠する人たちが増えた。 911と関連し、ブッシュ政権は、研究費を減らし、国防費に回したため、アメリカの多くの研究室の経済状況が悪くなり、ポスドクで雇用できる枠が減ったことも、日本からの留学者にはマイナスに働いた。

うーむ。いろいろな要因があるんだな。

私は、あんまり海外志向がないけど、本当は行った方が良いとは思う。

高学歴ワーキングプア - その発生・現在・そしてその解決に向けて

http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10477265338.html

今の大学や研究所の状況は、多くの人が望んでなった結果なのだろうか。

それともトップダウンで決められて、下の人は仕方なく従ってこうなったのだろうか。