間にあるもの

下記は2002年8月30日頃に作ったものです。年齢制限はありません。

私が○と付き合い始めてから半年くらい経っただろうか。時間の長さが相手との親密度を直接指し示すわけじゃないけど、少しは相手のことが分かるくらいの期間は付き合ってきたわけだ。私は○のことが嫌いじゃないし、どちらかといえば好意をもっている、・・・と言うようなことを同居人に言ったら笑われた。「はっきり好きだとか愛してるっていえばいいじゃない」って。確かに遠まわしで控えめな言い方であると言えなくもない。


外見だけみれば友達に自慢できるようなものじゃないし。別に卑下するほどでもないんだけど。外見ってすごい重要で大事なことは認めるけど、‘‘一歩先’’を考えるときは、また別の視点が多く入ってくるよね。


世の中にはいろんな人がいる。私が尊敬できる人、私が軽蔑せずにはいられない人、私と楽しくお互いにおしゃべりできる人、私がつい守ってあげたくなってしまう人。ついつい趣味の話で盛り上がってしまうという関係だってある。


私よりだいぶ年上で考え方とかもしっかりしていて、「年をとったらあんな大人になりたいなぁ」って思う人もいる。私よりだいぶ年下だけど、一途ではっきりしていて、前向きで元気な人も知っている。「あの純粋さは私からいつ失われたんだろう」って、思う時もあるけど、よく考えればもともとそんなものは持っていなかったかな?


○は、どういう人かと問われると難しい。上記のようなタイプではない。私と2,3歳しか年齢も違わない。少し不安定なところがあって、でも子供っていうわけじゃなくて、部分的に優れているところ、ちょっと駄目なところがなんか不思議な感じでブレンドしている。


私だって、あんまり他人のことが言えるほど成熟しているわけじゃない。未熟といってもよい。そんな私が人を評価するんだから冷静に考えれば、とってもおかしなことだけど、婚姻関係を結ぶかもしれないってことを考慮に入れるんだから、私が思うように評価してもよいのではないかな?


お互い少しずつ世間様からずれているわけで、会話も最初はぎこちなかった。今でもそういう時はあるけど。でも、興味対象が一致する場合の、意気投合の感覚は凄まじく強烈で、異なる人生を歩んだ自分がもう1人いたんじゃないかって思う時もある。


同じっていうより歩むペースがとても近い気がする。考えるペース、行動するペース、何かを読み取るペース。それが緊張しすぎない理由なのではないかと思う。


ちょっとしたぎこちなさも大事。ちょっと謙虚になれるし。おたがい変だって自覚しているから、お互いちょっとだけ譲歩できるって感じもよい。ちょっと分かりにくいかな。


それで、でも、結婚するか?って、ちょっと自問してみると少しだけまだ踏み切れない。


いままで会ってきた異性の中で一番しっくりする、等身大の自分でいることができる、重い積荷をちょっとだけ分担できる、責任の一部を少しだけ分かち合える、・・・ような安心感があるような人だとは思うんだけど。今の私では、未だ先に進めない。物理の問題とかを解いているときに途中の解答に自信が持てないと次の問題やその次の問題に集中できないようなかんじ。・・・ちょっと違うか。


幼馴染で同じ年齢の旧友というか悪友というか変人は、「結局分からないよ」って言った。「うーん・・・、自分が時期だなって思った時が、やっぱり一緒になるべきじきなんじゃないかなぁ。○のほうはどうなの」

そういうことを、ちょっと切り出そうかどうかという微妙な時期なんだって。まぁ、私にとってということなんだけどさ。


「人の考え方や思考ってさ、結構その人が経験した限られた条件によって左右されるわけじゃない? 昔のキリスト教の聖人といわれているヨ××だったかパ□□だったかな、パ□□じゃないや、ペ■■だっけ。確かどっかの言葉で石を意味したような。荒野をさまよっているときに雷が近くに落ちて、神様に助けて欲しい、回心しますって感じでしょう。それまでキリスト教徒弾圧してたんでしょう?それから180度回転してしまうわけだ。死の恐怖が考え方を変えたわけだね。そういえば雷って遊牧民は恐れるらしいね、まぁ、隠れるところがないもんね、草原とかじゃ。死の恐怖というと臨死体験とかよく出てくるけど、まぁ、それもどうでもいいや。あと自己啓発セミナーとかいったことある?私はないんだけど聞くところによると、まず集まった人たちを社会とは切り離された特殊な空間に閉じ込める。そして、肉体的・精神的に極限状態まで疲労させるとより効果的。例え、それが無意味そうで無価値そうでも、非日常の体験をさせるということによって、人に別のフェーズを感じさせるわけだね。理解というより体感させる感じ。体得することだからそのセミナーに参加していない人は良くわかんないし、まぁいろいろ社会問題にもなったりするよね。まぁ、宗教なり信仰なりそういうのを広めるためには、いろいろ手段があるわけじゃない? もっとも単純でやりやすいのが薬物かな、若いうちは手を出すのは控えたほうがいいと思うけど。正しい処方に従って正しく使用しないと、人生がむちゃくちゃになっちゃうからね。でも薬物の全否定はしてはいけないよ。現在の日本のような社会システムではあまり適合するような使い道は見つからないかもしれないけど、それは道具の一つなんだから。プラスにも使えるしマイナスにも使える。ただ、マイナス面があまりにも目立つからひとまず法律で禁じてあるんだど。まぁ、正しくそれ系の薬物を使える人はもうあまり日本にはいないよね。金儲けに走る人たちがそういうのを資金源にしてしまうこともあるし。馬鹿と鋏は使いようっていうけど、薬もまさにそのとおりだよね。正しい知識と技術がない人は用いるべきではない。あれ結婚の話だっけ。まぁ私が言いたいのは、#に足りないのは強烈な体験だと思うわけ」


「それが肉体関係ってこと?」


「人それぞれ、というか組み合わせによるというか、夫婦で互いに共有できるのって究極のところ時間なわけじゃない? 生活するわけだ。何をしてすごす?まぁ、肉体関係があれば出産子育て、いろいろ共有するものの種類が増える気がしない?」


「子供を生み育てるのが人生の目的?」と、私。


「そこまでは恐れ多くて一介の20代の男性には言えない」っと彼。続けて、「子供を生み育み成人させるって言うのは、社会を存続させるって言う意味で、・・・こう義務に近いものがあると思うし・・・、生物としても義務って言うわけじゃないけど、そういう連綿とした営みがあるわけだし・・・、それを否定するなんて恐れ多いことは私もできないよ」


「あっ、あれね。つまり連続性ってこと?」と、私。


そして彼。「というより同一性かな。そうね・・・、例えば好きな異性とセックスしまくり、子供は人工授精なりなんなりで、自分の遺伝子を持つ知らない人との子供を作り、・・・で結局その子は養子にでも最初から出しちゃって、適当にかわいらしい子を探してきて自分が育ててみたり」


私は混乱してきたので正直に、「なんか話が良くわかんなくなってきたな」と言う。

彼のわけのわからない話は延々と続くのだがそれは省かせてもらう。

そして、別れ際に、「要するに強烈な体験を持ちなさいってことかなぁ。意味がありそうなのは」って言う。「異性同士では肉体関係がまぁ適当なわけ。人類が歴史を賭けて、存亡を賭けて、作り出した妄想である婚姻制度もはったりじゃないんだね。ひとまず男女の間にある一番大きなそれを定義しわける基本というか存在は性であるわけだし」

「最上の人間関係は男女間の肉体関係ってわけ?」

「さぁねぇ、まぁ実践して確かめて違うと思ったらまた新しいのを模索してみたら?」

「そうねぇ、それで私も☆☆☆じゃないなって結構早く分かった気がするし」

「僕のほうはそれ以前に#じゃないなぁ、って感じてたけどね。まぁ早く決めるのもいいし、のんびり決めるのもいいんじゃない? 人生それぞれ」

「ありがとう。参考になったかどうか分かんない。というか、よけいわけわかんなった気もするけどひとまずお礼」



最初に話した同居している子は2歳年下の女の子だ。その子に話したら「肉体的な関係がないからだよ」っていきなり言った。

うん、確かに○とはない。いまのところ。あとで彼女はちょっと生意気じゃないのって気がついた。彼氏もいないくせにさ。それともいるけど照れくさくて隠しているだけかな。

彼女のコメントをいくつかあげておこう。「そもそもそのわだかまりはだれ誰にもあって、みんなあきらめているものだと思うけどな」「どっかで見切りをつけるっていうか、諦めるっていうか妥協するって言うか、まぁ大博打っていうか」「そんなわけわかんないものに、心を煩わせるなんて馬鹿じゃないの? そんなに真剣に悩まなくても適当でいいと思うけどな。将来ずっとそういうことで悩むなんて。些細なことに悩んでいたらきりがないんじゃないの?」




そして、
その後、
○と私との間にはいろいろあって
紆余曲折、
右往左往、
エトセトラ。


・・・で結局。


何か進んだかな?
まぁ少し知識はついたかも。
けっこう気持ちよかったかも。
ちょっとうれしかったも。
ちょっと切なかったかも。
ちょっと満足かも。
ちょっと心が静かかも。
私は○に話し掛ける。
「あのさ・・・」
言いたいことを途中まで言いかける。
「何?」
「ううん、やっぱりいいや」
「私も言いたいことがあるんだけど」
「何?」
「んっ、やっぱりいいや」
つまらないことばのやりとり。それが全て? ・・・・・・私は・・・とてもよい気持ち。

陶酔感。蕩けるように気持ちよく。

どこまでも透けるような感覚。そう・・・、この感覚以外に何がいりますか?
私と ○と いまだけ ここだけ 私達の間だけにある。

私は、○は、○に、私に微笑を向けた。


20歳前後の女の子が語り手のつもり。