その40 「それは、〜に対する抵抗だったと今では思う 5」

25歳以下は読まないでください。

私の気質は少しずつ摩滅して消えて、
意志は年をとるごとに弱くなる気がした。
加齢によって、思い切った行動をできなくなっていくという焦燥感。
そんな想いが、私の心で少しずつ膨張というか蓄積していった。



彼女はごろんとベッドに仰向けに寝そべった。
黒い天井をじっと見ている。
そして目を閉じた。


動きは先ほどからゆっくり。
一つ一つの動作がとても丁寧な印象を受ける。
残りの時間が僅かなことを意識しているのかも。
大事に大事に、噛み締めるように。

些細な行動もいつもより意識的に。
それは・・・、
名残惜しいから?

ひとつひとつが最後の体験。
でも、実際は、死ぬ前じゃなくても、ひとつひとつは最後の体験なのだけど。
最後であることを認識していないだけ。
それを、何度も欲しいと思うかもしれないけど、
それは叶わない望みなのだと思う。


私の行動は、「老いていく自分」「弱くなる自分」
「嫌な要素、忌避すべき要素が増えつつある自分」への抵抗だったと思う。
それは逃避と言い換えてもいいものかもしれないけど。


私はやるべきことをやったと思う。今は幽閉の身。
体を動かして何かをする機会は与えられていない。
私は数日内に○○される。
○はすぐそこだ。残りの僅かな人生を消費するだけの私にとって、
やることができることがあるとすれば、想い考えることくらいだろう。



彼女は眠りについたようだ。
呼吸音で、そういうのはわかる。

遠くで犬が鳴く声。

彼女の安らかな寝顔。

どんな夢を見るのだろうか。
もし夢を見ているのであれば、
それが、良い夢であれば良いな、って「私」は思う。


もう、あんまり伏字の意味ないですね。まぁ、要するに死んでしまうのですね。