『ほかほかのパン―物理学者のいた街〈2〉』(太田浩一)

ほかほかのパン (物理学者のいた街2)

ほかほかのパン (物理学者のいた街2)

清水禮子の文章を引用している。この引用が面白い。
p.v

「私たちが誰かに興味を抱いたり、その著作に夢中になったりすのは、その人物が欠点のない上等な人間であるからではなく、書物が立派なことを緻密に語るからではない。彼の一寸した言動の中に、一寸した言い回しの中に、日常的感覚的なレヴェルで自分と同質なものを何か認めるからである。自分にも覚えのある喜怒哀楽の断片を見出すからである。未知の人の中に、未知の書物の中に、自分と同質の普通人の気配を感じると、私たちはホッとする。そして、この安心感を通路として、その人物、その書物の内側に入っていくことが出来る。相手の辿った人生の道をなぞってみる元気が沸いて来る。自分の身に引きつけて本を読む面白さも沸いて来る。」

研究で言うなら、そのようなとっかかりをいかに見つけるかが、研究を楽しめるかどうかの鍵となるのかもしれないな。