『食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点』(中西準子)の感想1

食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点

食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点

もうちょっとまじめな感想を書くことにしました。・・・感想というか引用およびインプレッションの羅列という程度ですが。


中西先生の本は、これで3冊目です。
『環境リスク学―不安の海の羅針盤

環境リスク学―不安の海の羅針盤

環境リスク学―不安の海の羅針盤

『環境リスク論―技術論からみた政策提言』(中西準子)

環境リスク論―技術論からみた政策提言

環境リスク論―技術論からみた政策提言

とを今まで読みました。


この本においては、食の問題やその他関連する問題について取り扱われています。新しさとしては下記のようなものがあげられるでしょう。

1. 食の安全の問題を(環境問題と同様に)リスクの観点から考え、安全の度合いを定量化する
2. リスクの裏側のベネフィットも考慮し、リスク削減の事を考える。
3.時間変化するリスクとその対策

このような趣旨のことがまえがきで触れられています。


さて、著者は環境リスク学の専門家です。環境リスク学とはどういうものでしょうか?
まえがきには下記のように書かれています。

環境リスク学というのは、環境影響をリスクという形で定量的に評価し、それを下に環境問題解決のための意志決定をする学問の分野です。私が環境リスクという概念と方法が必要だと強く主張したのは、環境問題がとても複雑になって、単純に善悪で判断できなくたってきたからです。


リスク評価という視点を取り入れると、何が問題点で、どうすればいいかが明瞭にしめされます。これを食の問題に当てはめていろいろ論じています。


まえがきにおける下記のような文章がとても印象的。

「ブログの記事を読んでいただくと、あるかないかわからないような小さなリスクに対して大騒ぎするのに、実態のあるリスクについては、「風評被害を防ぐために」というスローガンの下で、行政機関もマスコミも市民団体も口を噤んでしまうという日本の現状が見えてくると思います。これもリスクを数値で表したから見えてくるわが国の問題なのです。」

このように数値化できる技術者・科学者が今の世の中には必要なのではないかと思います。そして、その数値に基づいて価値判断を行い、新たな政策や安全基準を作っていく必要があるようです。

ブログというか中西先生の「雑感」については下記からアクセスできます。
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/

この本は全4章からなります。
第1章 食の安全 ―その費用と便益
第2章 食べもの情報vs. リスク (対談 高橋久仁子)
第3章 食をめぐる論争点 ―わたしはこう考える (ききて 松永和紀)
第4章 さまざまな食の問題

第1章は東大大学院でのスピーチの内容。第2章は群馬大学の食料化学の専門家のの高橋久仁子教授のインタビュー記事。第3章は『食卓の安全学』の著者の松永和紀さんが聞き手になっています。第4章は先ほどリンク先を紹介した『雑感』における食の安全に関する記事などが書かれています。


なんか長くなったので続きます。