『過去を復元する 最節約原理,進化論,推論』(著:エリオット・ソーバー (Elliotte Sober)、訳:三中信宏)の感想 1.5

過去を復元する―最節約原理、進化論、推論

過去を復元する―最節約原理、進化論、推論

以前に読んだときの印象や考えてた事などを箇条書きしておきます。


http://twilog.org/fujisawamasashi/date-101116

  • 第一章までの感想。全体的類似度法と分岐学的最節約法との違いについてがインパクトがある。前者はなんとなくわかるけど、後者に関しては私は考えてなかった気がする。これらの手法が有効・適切な推定であるかは、"プロセス"の事に踏み込まなければいけない。
  • 第二章までの感想。科学理論における最節約性や単純性に関して。p.89の「単純性に頼ることは,ある経験的背景理論をはっきり言わずにすませるための便法である.」あたりが面白いな。帰納的推論に関しての記述も良い。
  • 哲学用語や生物学用語が多くて読むのがたいへん。はじめて知った言葉は、そのイメージが定着するまで時間がかかる。物理学を使った例がでてくるとちょっとほっとする。3章以降を読むのは、ちょっと時間をあけてからになるかな。
  • 物理では、「数学的には厳密な説明じゃないけど」、みたいな断りの後に、単純な説明が展開されることがあります。
  • 「科学ってどういう性質を持つの?」という素朴な疑問が私にはある。よく分からないながら研究に従事している。『過去を復元する』を読んでいる時の感覚は、内容は違うんだけど『非線形な世界』(大野克嗣)や『科学の真実』(ザイマン)を読んでいる時と近い。科学のある側面を見せてくれる感じ。
  • 学ぶ事は「能力の向上」のためでもあるけど、新しい価値観に触れるという意味合いもある。

http://twilog.org/fujisawamasashi/date-101120

  • アブダクション(abduction)とは 「仮説形成、仮説的推論、演繹と帰納に対する新しい推論方法」という意味。しかし、「誘拐」とか「拉致」とか意味もあるから気をつけなきゃ。「アブダクションって面白いよねー」とか。
  • ホモロジー(相同:homology)とホモプラシー(非相同:homoplasy)の概念か。
  • 系統推定。いくつも前提条件を入れて議論している。一番単純なシステムについて考えているのに、このやっかいさ。単系統群の決定というのに、こんなに面倒な手続きが必要なものとは。
  • 生の系統樹とは私は格闘していないわけであって、上澄み成分をちょこっと嘗めてみただけという感じなのだと思う。
  • プロセス仮定は、過程仮定になるな。
  • 自分の頭の中に新しいモデルを形成するのは、やっぱり労力使うよね。


http://twilog.org/fujisawamasashi/date-101123

  • なんとなくなだけど、物理を生業としている人達の一部には、生物学や化学を見下しているところがあるのではないかと感じる。この言い方はあまり適切ではないかもしれないが。生物や化学は「覚えることが多すぎる」という偏見を持っている気がする。
  • そのため、その背後にある哲学というか方法論的面白さみたいなものが存在することを忘れてしまっている・・・気がする。または生物は複雑すぎて人間の手に扱えないと思っているのではないか。はっきりとした事が言えないと思っているのではないか?
  • こういう事を書くと、私がこのような典型的な偏見を持つ物理学者(ある意味わら人形)をこしらえたに過ぎないんじゃないの?というつっこまれるかもしれない。まあ、まさにそうなんだけど。まあ、このような偏見はともかく、私自身は生物や化学に対して苦手意識を持っているわけだ。
  • かと言って、物理学に関しては自信があるのか?と言われれば私は誰よりも真っ先に首を振りたいのだが、いろいろな事情があって、首を振れず、最終手段は笑うしかないと言うこともある。冗長すぎた(反省)。
  • さて、物理の世界でも、形而上学的な問題というか、方法論的な問題みたいなのは存在する。ベイズ統計の本(伊庭幸人『ベイズ統計と統計物理』)に書いてあった(←本に丸投げ?きちんと自分の言葉で説明するべきだよね)。
  • 物性物理の強相関系などでも、理論的な取り扱いにおいて、派閥みたいなものがあって、解釈の仕方で争い合っていると聞いた事がある(←伝聞?もう少し中身に踏み込んだ話はできないの?)。
  • 光は、波か粒子かでいろいろ議論があった。それが解釈できるようになるには、量子力学が必要になる。新しいものを作っていく時は、根拠がよく分からないあやふやな仮定を前提にして、考える事が時に必要だったりする。(物理屋さんとしていいかげんな書き方でごめんなさい)
  • もやもやとしたことを考える際にはなんらかの哲学的な背景に基づいて研究が行われる(事がある)。著作を読んでいないのに書くのも何だが(←こればっかりだ)、マッハ的な*1「物理量の関係だけ分かればよくて、解釈なんてどうでもいい」みたいなことはない(←要出典)。
  • 精密科学としての定量性は重要ではあるが、生じていることに解釈が必要だったりする。(承前)生物学を考える際に物理学が強力な武器であるとわかると物理好きの人も楽しめようになると思います。『眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く』(アンドリュー・パーカー)とかは、物理好きな人にとって生物学を入門する上での良い本だと思いました。
  • 物理学にもあやふやな部分(解釈というか形而上学的部分)があって、生物学にも強固な理論があるんだなーと、ざっくり考えている。

*1:ちょっと問題のある書き方かも。消さないでおきますが。