『過去を復元する 最節約原理,進化論,推論』(著:エリオット・ソーバー (Elliotte Sober)、訳:三中信宏)の感想 7

ISBN:9784326101948
今回は「第3章 共通原因の原理」の感想

帰納(induction)、仮説発見(abduction)、共通原因の原理(principle of the common cause)、ホモロジー(相同形質)などの言葉が最初に出てきます。

p.98

「すぐれている」という言葉の意味をはっきりさせる必要がある。

ここらへんもなんかおもしろいです。

「3.1 表形学の2つの陥穽」

p.99
全体的類似度(overall similarity)という言葉が出てくる。

p.100
ホモプラシーがまた出てきた。固有派生形質(autopomarphy)、系統枝(lineage)という言葉が出てくる。

p.101の5行目からのパラグラフ「ここで重要なのは、全体的類似性・・・」あたりが面白い。全体的類似性の問題点。専門家ではないと、こういうことには気がつきにくいかも。

p.104

進化プロセスに関する仮定とは関係なく、全体的類似度法は正しいという考えは間違いであるとすぐに結論できる。

こういうのも面白いですね。

「3.2 相関・共通原因・濾過」

p.105
アナロジー(analogy:類似)という言葉がでてくる。あと型(type)と個別(token)という言葉が出てくる。哲学用語なんですね、これ。

p.106
連言的分岐(conjunctive fork)という言葉がでてくる。

p.107
共変動(covary)という言葉がでてくる。

p.107あたりから確率の計算がでてきます。この時点ではまだあんまり難しくないですが・・・。

(4) Pr(A1&A2/T)=Pr(A1/T)×Pr(A2/not-T)

って書いてあるんだけど、文意から考えると、

Pr(A1&A2/T)=Pr(A1/T)×Pr(A2/T)

だと思います。たぶん。あと、本文の下から3行目の「[(3)〜(4)]」は「[(4)〜(5)]」の間違いだと思います。たぶん。

p.108で濾過(screen-off)という概念が出てきます。

「3.3 存在論からの1問題」

p.112に遠因(distal cause)と近因(proximal cause)という言葉が出てきますね。

p.113で量子力学の話が出てきます。まさか、EPR相関(またはEPRパラドックスでもいいけど)の話がでてくるとは。そして、Bellの話まで出てくるという。


「3.4 認識論からの諸問題」

p.119 共分散(covaiance)という言葉が出てくる。


p.121

それらの原理が念頭に置く観察と推論仮説との関係はあまりにも短絡的すぎる。背景理論の文脈のなかでのみ観察は経験的意味をもつ。

Reichenbachの原理のどこを探しても、仮説の評価は相対的な(comparative)作業であるという考えは見当たらない。ある原理にもとづいて特定の説明を与えたならば、その説明がほかの説明と比べてすぐれているのかを示す必要がある

ここらへんも面白い。

p.124
尤度(likelihood)という言葉が出てくる。

p.126〜127
共通原因とか共通遠因の話はおもしろいなあ。「外群(outgroup)に対して」というあたり。

p.129〜p.130の議論は面白いなあ。

p.130〜p.131にちょっとまとめがあります。ここは抑えておきたいかな。いろいろ推論を行う際に有意義だと思う。不適切な推論を批判するために有意義というべきか。

「3.5 尤度と攪乱変数の問題」

p.133 ベイズの定理(Bayes's theorem)が出てきた。
ベイズというと、以前『岩波講座物理の世界 物理と情報 (3) ベイズ統計と統計物理』(伊庭幸人)という本を読みました。

岩波講座 物理の世界 物理と情報〈3〉ベイズ統計と統計物理

岩波講座 物理の世界 物理と情報〈3〉ベイズ統計と統計物理

感想(引用と印象)は下記に書きました。
http://d.hatena.ne.jp/sib1977/20100117/p2


事後確率(posterior probability: 観察のもとでの条件付き確率)、事前確率(prior probability)と観察の無条件確率(unconditioned probability)などが出てきます。


p.138-139の定式化しているところがおもしろい。

「3.6 結論」

特に思ったことはない。


第3章を読んだ上で、いくつか思ったこと。

  • 素朴で正しそうな考え、それとそれではうまくいかない場合というのがセットになっていて分かり易い(と思うところがあった)。
  • 扱うべき問題の困難さはあるかも。極めて特殊な、限定された条件下の問題を解くさいに多くの困難さがある。
  • p.110の「推論規則というのものは無謬(infaillible)でないとしても合理的(reasonable)であればよい」というのは面白いと思った。
  • 選んでいるトピックは、それぞれ深みがありそう。議論を行う上で必要なところを抽出している感じ。