磁化率とかg値とか

何回も質問されるので、面倒なので書いとく。でも、磁性の本とか見ればすぐ分かることだと思うけど。

磁化率(χ=M/H)の単位系で、[emu/mol]で表されていますよね。
でも、これって、[emu/(mol・G)]だったりします。磁場で割っているし。
常磁性体の磁化率は、Tを温度として、

χ=C/T

と表されます。Cはキュリー定数と呼ばれる定数です。
キュリー定数Cは

C = N_A (μ_B)^2 g^2 S(S+1)/(3k_B)

と表され、単位は、[emu・K/(mol・G)]となります。

N_A: Avogadro数 6.022×10^{23} [1/mol]
μ_B: Bohr磁子 9.2741×10^{-21} [erg/G]
g: g-factor、自由な電子の場合 g_e = 2.002319
S: スピン量子数
k_B: Boltzmann定数 1.3866×10^{-16} erg/K

erg(エルグ?)はcgs系のエネルギーの単位です。K(ケルビン)は温度の単位、G(ガウス)は磁場の単位です。
N_A (μ_B)^2/(3k_B) (単位は、[emu・K/(mol・G)])の値を知っておくといろいろ計算が楽になります。

N_A (μ_B)^2/(3k_B)=0.124・・・≒1/8
であり、概算するときにはこの値を使うのが良いでしょう。


また、別の話。
[emu/mol]を[μ_B/(magnetic ion)]という風に換算したい時があります。
だいたい、

5580 [emu/mol]= 1 [μ_B/(magnetic ion)]

となります。

1 μ_B =9.2741×10^{-21} erg/G or emu

1 N_A = 6.022×10^{23} [1/mol]
なので、
1 μ_B×1 N_A = 5584.86・・・ emu/mol



多少不正確ですが、まあこんな感じ。


まあ、上記のようなのを信用するより、やっぱり普通の教科書を見るのが良いと思います。身近にないなら、買いましょう。図書館に行きましょう。下記の文献とかもお薦めです。

「分子磁性に興味をもつ分子科学者のための量子スピン入門」(田村雅史)
http://j-molsci.jp/archives/AC0009.pdf

【追記 2011年2月】
G(ガウス、磁束密度の単位)と書いてありますが、Oe(エルステッド、磁場の単位)と記述した方が良い場所があるかも。まあ、そこらへんは教科書を読んで下さい。

【参考】


【追記 2012年10月】
固体物理』(アグネ技術センター)のVol.26 No.7 (1991)の40〜41ページ(440〜441ページ)に「磁気単位換算表」(宮台朝直)という記事があります。参考になるのではないかと。