『100分de名著』の「「アイヌ神謡集」知里幸恵」が良かった。
アイヌについてわたしはほとんど知らない。小さいころ読んだ子供向けの歴史漫画で、江戸時代に和人がアイヌを搾取し続けてきたことは覚えている。明治維新以降の話は認識していなかった。東京国立博物館でアイヌの文化についての展示も見たことがある。こういう物を使って生活していたんだなぁ、という印象程度だったと思う。『ゴールデンカムイ』(野田サトル)というマンガを読んだことがある。日露戦争後の北海道とその周辺が舞台。アイヌのたくましい少女と、和人のタフな元兵隊の青年とが相棒になって、冒険する物語。アイヌや北海道の歴史・文化をほとんど知らなかったわたしとしては、あまり深く考えないで楽しんでいた。
主人公の少女の顔は、知里幸恵をイメージしてデザインされたのかな?と気になっていて、『アイヌ神謡集』が、どういう背景で書かれ、どういう作品なのか気になっていた。それが番組を見た理由でもある。実際に見て、とても面白いというか、興味深いというか。そして悲しい気持ちになった。
カムイの発音の仕方。ムをちょっと強めに言うらしい。カムイ概念についての説明も面白かった。我々が普通に考える神ではない。自然というわけでもない。物事を有機的につなげる人格のようなものを持った魂という印象を受けた。カムイが適切な状態と言うか、適切に流れていくのが大切な事のように感じる。アイヌの地で、人々が協力して、よりよく生きていくために生まれた世界観だろうか。
実際に神謡がどのように歌われるのかも聞けて良かった。聞いていると心地よさがある。こういうのは文章だけを見ていてもわからない。音や映像は強い。「サケヘ」という特殊な言葉も初めて知った。
そして、アイヌ民族の迫害の歴史にも番組では触れられていた。特に明治以降の土地・文化・習俗・生業等の剥奪と、同化政策について。これを見て、少し違うかもしれないが、『アメリカ・インディアン悲史』(藤永茂)を思い出してしまった。ネイティブアメリカンに対して行われようなことが、北海道の地で行われてきたんだなって。奪われ同化させられる者達の悲しみ。でも希望を捨てられないこと。単純に、感動したというような消費はしたくないけど…。ともかく、わたしは刺激を受けた。そして、もしマンガを再読したり、博物館の展示を見たら、以前とは異なる感想を抱くと思った。
ゴールデンカムイ公式サイト https://youngjump.jp/goldenkamuy/
名著123「アイヌ神謡集」知里幸恵 - 100分de名著 - NHK
https://www.nhk.jp/p/meicho/ts/XZGWLG117Y/blog/bl/p8kQkA4Pow/bp/pkLyZMV8dp/
名著123「アイヌ神謡集」:100分 de 名著 プロデューサーAのおもわく
https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/123_ainu/index.html
朝日新聞出版 最新刊行物:選書:アメリカ・インディアン悲史
https://publications.asahi.com/product/2077.html